生まれたときから猫がいて

生まれたときから家に猫がいて、今までずっと「猫がいるのは当たり前」という環境に暮らしていたMさんは、普段の生活より猫との別れのほうが印象に強くのこっている、と言います。これまでに20匹以上の猫との別れを経験してきたそう。戦時中、疎開のために家を出なければならなくなり、飼っていた猫を置き去りにするしかなかったのが最初の別れ。家の欄間に上がって背中を丸めていた猫の姿が、未だに忘れられない記憶。

「今でもそのときの猫の表情を思って、あの猫はどうしたんだろう、って思うんですよ」
東京で飼った猫たちには、代々「ミーくん」という名がつきました。今いる「ミーくん」で3代目となります。
「初代は、私がまだ20代の頃に飼い始めたんです。拾ってきてうちの猫になったとき、『お前はミケか?』『タマか?』って名前を呼んでも返事しない。ところが、『ミーくんか?』っていったら、『ニャオ〜ン』って返事をしたんです。自分で名乗ったんですよ。それでそういう名前にした。このミーくんを猫だと思ったらダメだ、ってみんなに言ってたくらい。インターホンで『2階に上がっておいで』って言うと、ちゃんと言葉を分かって来るんですよ。私が『フゥ』ってため息をつくと、横に来て『フゥ』って言う。これは真似をしているな、と思って、ドテンとひっくり返って『フゥ』ってやると、横へ来てまったく同じ仕草で真似するんです」
そんな風に13年間をMさんのすぐそばで過ごした初代のミーくんは、その最期もMさんの腕の中で迎えたという。
「猫はよく姿を隠して死ぬと言うでしょう。あれは家に子供がいたりすると、キツイときに触られるのが嫌で出ていくんです。普通は主人の腕の中で死にますよ。かじりついて。初代なんてそうでしたから。もうダメって分かったけど徹夜で看病して、死ぬまで抱いていようと思ったんです。でも12時頃に私がへばったんですね。ちょっとウトウトした30秒くらいの間に息を引き取った。これは一番悲しかった、今までで。死んだ後も一晩抱いていて、でもいつまでも抱いているわけにはいかないから埋めたんです。それが私が36歳のころ。『ミーくん、さよなら』っていう台詞を自分の漫画の中で浸かった、その放映の週に死んだんですよ」
あまりの悲しさにしばらくは猫を飼おうとは思わなかったが、ある日天井裏に入り込んでいた猫が、子猫を産んでいたことが分かったのです。

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